いろ〜んな憶測が飛び交った
「トイレに 1 万円」
この椿事も、どうやら終息したようですね。
騒動のさなか、鳥取の倉吉で 「あんたも 1 万円を捜しているのか ? 」
トイレを漁っているオトコに声を掛けられました。
私め、本来の『用もなく』トイレに入り、中を覗き見て他のトレイに向かうという、トイレ巡りをしていたからです。
そうなんです、知る人ぞ知る、倉吉観光のひとつ、トイレ巡りであります。
いろんな町おこしを見て参りましたが倉吉というところは
「トイレの町・倉吉」
ちょいと変わった町おこしをしました。
とにかく凄いんです。野外17カ所に設置された公衆トイレは
日本一きれいで心配りの行き届いたものにする
このスローガンのもと、数寄屋風、ペンション風、グランドピアノの形をしたモノまであって、その外観からはトイレとは見てとれない素晴らしき建築物です。
 |
・元祖・数寄屋風トイレ
今となっては珍しくありませんね……。 |
それは旅行者に「見せるトイレ」というアピールだけではありません。
トイレの2階部分に会議室や多目的ルームを設置したり、待合室など市民のコミュニケートの場としても利用しているのです。
「トイレで食事してもおかしくない」
信じていただけないでしょうがそれほどの施設です。はい。
訪れるたび、記念撮影していたのですが、そうやく今回で全施設をおさめることができました。
……ただ、時期が悪かった。
「あんたも一万円捜してるの、ここはオレの縄張りだから他へ行ってくれ」
トイレ漁りに追い払われ、苦笑した次第です。
そして、達成感もいささかトーンダウンでした。
四国霊場八十八カ所のような
「やったぁ〜」
ではなくて
「とりあえず終わった」
でした。
というのも、当初の感動から年月が空きすぎていたからです。
悲しいかな、感激が薄らいでしまいました。
そして何より、ほとんどの観光地は倉吉のあり方を真似るようになり、
「ここのトイレの方が倉吉より凄いぞ」
神戸の『 1 億円トイレ』に代表される、「うちが日本一」と名乗るトイレが各地で出現するようになったからです。
そこまで華美でなくても、宿場町の景観にとけこむようなトイレとか、観光地はトイレのイメージアップをするようになりました。
 |
・景観にマッチした傑作
妻籠宿のトイレ |
平成の御代は、日本各地その特色ある景観にマッチしたトイレが出現しています。
ですから、初めて倉吉を訪れる人は
「ここもきれいで素敵ね」
軽〜く、受け流していることでしょう。
しかし、旅行者が気持ち良く利用できるトイレの原点が倉吉にあったことを忘れちゃ行けませんね。
「トイレも観光の延長」
観光地にこの意識を根付かせた発端となったのも倉吉です。
日本のトイレ史に 1 ページを残した地と記しておきます。
そんな『トイレ考』の今回、神社仏閣のトイレも注目していただきたいものとご案内します。
「みなさんのトイレです。きれいに使いましょう」
この主旨を宗教、教訓を入れたメッセージで提示しています。
福岡は学問の神様、太宰府にある男性トイレの案内板です。
そして女性用はこちらです。
紳士・淑女と記されるより、高齢者の人はこの二文字を見た方が
「みなさんのトイレです。きれいに使いましょう」
この文字数以上の心理的効果があるはずです。
注意を呼び掛けるメッセージはストレートじゃ伝わりません。
急ぐとも心静かに手を添えて外に漏らすな松茸の露
これは市井のトイレにおける名文でございましょう。
そんな名文を拝読するのもトイレの楽しみ? …ですね。
さあ、最後に今日まで出会った名文の中から最高傑作です。
それは岐阜の多治見にあります庭園の素晴らしい虎渓山・永保寺でした。
トイレに入りますとトイレット・ペーパーが設置されていません。 その代わりに、この名文です。
ここは寺ゆえホトケはあるがカミはない
……ケツをふかず合掌しました。
|